『出色の評伝』
巷では「評伝ブーム」だと言う。評伝が各種の賞を受賞することも最近はよく見られように思う。
本書は、それらの状況下でも就中珍しい観点の評伝に感ずる。
まずもって読者に特定の印象や意義を植え付けようという「あざとさ」はほとんど感じられない。
旧藩主、華族という「安穏としてしまうケースが多い立場」にもかかわわず、岡部は飄々と努力を重ね、実務家としての地位を築いていく。
その人物像と重ねたかのように、筆者はそれを抑制された筆致で解き明かして、岡部の特殊性と存在意義を浮き彫りにさせている。
あっさり一読してしまえば、あっさり読め、じっくり読もうとすれば、色々な観点を示唆しているという「玄人好み」の作品だと感ずる。
後半で、家族思いの岡部に育てられた子供達それぞれの顛末も、示唆に富んでいて面白い。
色々な読み解き方が出来る、出色の書であろう。お薦めする。