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評伝 岡部長職―明治を生きた最後の藩主

『出色の評伝』

 巷では「評伝ブーム」だと言う。評伝が各種の賞を受賞することも最近はよく見られように思う。 

 本書は、それらの状況下でも就中珍しい観点の評伝に感ずる。

 まずもって読者に特定の印象や意義を植え付けようという「あざとさ」はほとんど感じられない。

 旧藩主、華族という「安穏としてしまうケースが多い立場」にもかかわわず、岡部は飄々と努力を重ね、実務家としての地位を築いていく。

 その人物像と重ねたかのように、筆者はそれを抑制された筆致で解き明かして、岡部の特殊性と存在意義を浮き彫りにさせている。

 あっさり一読してしまえば、あっさり読め、じっくり読もうとすれば、色々な観点を示唆しているという「玄人好み」の作品だと感ずる。

 後半で、家族思いの岡部に育てられた子供達それぞれの顛末も、示唆に富んでいて面白い。

 色々な読み解き方が出来る、出色の書であろう。お薦めする。

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