『考古学者の現代への提言の書』
吉村さんは私が小さい頃からのあこがれの人です。考古学に未だに興味があるのも吉村さんの影響です。
この本は、考古学とは関係のないエッセーです。彼独特の人生観、社会観が出ていてそれはそれで良いのですが、内容的には得るものは少なかった。マスコミ批判をしたり、政治批判をしている割には厚生省見解を何の疑いもなく引用したりしています。学者(教授)という肩書きの人が文章を書くときには、やはり言いたいことを書き連ねればいいのではなくて、学問的な裏付けをしっかりと持ち、論理的な叙述をしなくてはならないのではないでしょうか。
科学技術を単純に肯定しているのも、どうも引っかかります。確かに人間の作り出した技術はただ単に地球を破壊するものではないでしょう。しかし、それがどういう社会体制の元で、どのような目的で使われるのか、それを抜きにして、良い・悪いは語ることは出来ません。つまり、彼には社会体制に関する認識が欠けていると思わざるを得ないのです。歴史を学とする人としてはとても残念なことです。考古学が目指すのは過去を知ることによって現在を再考する材料を提供することではないでしょうか。エジプト学というほぼ有史以来の知見を持っている彼にこそ、私はそれを期待したい。